「民族教育推進を求める要望書」を大阪府教育委員会へ提出
韓国民団大阪本部は、9月19日、「在日韓国・朝鮮人の民族教育、国際理解教育の推進を求める要望書」を大阪府教育委員会へ提出し、委員会と交渉を行った。
双方代表のあいさつ、自己紹介の後、「要望書」が呉時宗委員長から野内勲課長へ手渡され、質疑応答へと移った。
要望書は@「指導指針」「人権教育推進プラン」の具現化 A教育公務員 B高等学校 C民族学級など、の4項目で構成されている。
要望書の全文はここをクリックしてください
今回の重点課題は、「『大阪の教育力』向上プラン」の重点項目への「民族学級」「民族教育」の明文化だ。「向上プラン」は今後10年間の大阪の教育がめざす方向と5年間の具体的取組みプランであり大阪では民族学級などを通じて民族教育が活発に取り組まれているにも関わらず、「向上プラン」の重点項目には在日韓国人・朝鮮人の課題について全く触れられていない。
民団中央本部では昨年6月に、文部科学大臣に「教育振興基本計画と学習指導要領に関する要望書」を提出し、その中で民族的・文化的アイデンティティを尊重する施策を明示するよう要望した結果、教育振興基本計画に反映された経緯がある。
話し合いの結果、委員会は「向上プラン」に在日韓国・朝鮮人の課題について明文化を検討することを約束した。
その他の主な回答は次のとおり。 ※数字は2008年度統計
○大阪府内で「在日外国人教育に関する指導方針/指針」に本名原則を明示している市町村教育委員会は37市
町村
○大阪府内の中学校での本名使用率が4%向上し、特に八尾市・東大阪市で大幅に改善された
○大阪府教育委員会が策定した「在日韓国・朝鮮人問題に関する指導指針」をホームページに掲載を約束
○「韓国語」を開講する大阪府立高等学校42校、履修人数1,232名
出席者:教育委員会=人権教育企画課 野内 勲 課長 以下13名
民 団=民族教育推進委員会 呉時宗 委員長、鄭炳采 文教部長、高徹 文教部員、姜孝裕 民族教育推進委
員、婦人会大阪本部 金玉枝 副会長、朴米子 文化部長、青年会東大阪支部 柳邦治 会長
〜〜要望書全文〜〜
貴教育委員会が、人権尊重の教育を柱に「在日韓国・朝鮮人問題に関する指導指針」(以下「指導指針」)などをもとに、在日韓国・朝鮮人の民族教育・国際理解教育推進に積極的にとりくんでこられたことに対して、敬意を表します。
一方、学校園では民族差別事象は未だなくならず、在日韓国人の多くは生活に不便を強いられる懸念があるため「日本名」使用を余儀なくされ、教員の管理職受験は認められていません。また、国際結婚によりダブルの子どもたちが増えていますが、実態を把握できていないため、結果的に当該児童・生徒の両親の文化・習慣や子ども自身の存在を無視することに繋がりかねません。
貴委員会がこれらの状況をふまえ、民族教育・国際理解教育を継続して推進し、多民族・多文化共生教育が大阪府内の学校園に定着することを期待して、下記のとおり要望いたします。
記
T 「指導指針」「人権教育推進プラン」の具現化
1.大阪府内のすべての市町村教育委員会が「在日外国人教育に関する指導方針/指針」を策定し、
貴委員会「指導指針」に示された本名指導の趣旨に沿った内容に改訂するよう指導してください。
2.市町村教育委員会が策定した「在日外国人教育に関する指導方針/指針」や外国人教育を担当する部署名、
民族学校の存在を市民に広報するよう指導してください。
3.昨年度に発生した民族差別事象の傾向と課題を明らかにし、「専門委員会」を設置して民族差別を根絶してく
ださい。また、事象が生起した学校での再発を防ぐために、校内研修の充実など適切な指導をしてください。
4.在日外国人が本名を使用できる環境を醸成するために、各市町村教育委員会や府立学校に、
次の項目について指導してください。
@「就学案内」の改訂および送付時の本名記載の徹底
A小学校入学時からの指導の体系化と、中学・高校への進学時の連携強化
B指導要録や卒業証書授与台帳など公簿類への本名と母国語よみのふりがな記載の徹底と、
卒業証書への本名記載の徹底
C在日外国人教育指導資料『本名指導の手引き』の継続有効活用
5.「教育振興基本計画」に基づき、外国人児童生徒の教育を充実させてください。
6.韓国・朝鮮にルーツを持つ日本籍および重国籍の子どもの実態を把握し、民族教育を保障してください。
7.「人権教育教材」の進捗状況と今後の予定を教えてください。
8.「指導指針」「学校における人権教育推進のための事例集」などをホームページに掲載してください。
9.教科書の選定委員や調査員の選定時に、外国籍住民や教員の声が反映されるようにしてください。
10.大阪府在日外国人教育研究協議会への補助金を確保し、継続して支援してください。
U 教育公務員
1.外国籍教員を積極的に採用し、本名使用を原則としてください。また、外国籍教員・講師が本名を使用するよう
指導してください。
2.外国籍教員の管理職任用試験の受験資格を認めてください。
3.在日韓国・朝鮮人をはじめとする在日外国人に係わる人権研修を計画的に実施し、在日外国人を講師として
積極的に招請してください。
V 高等学校
1.今年度廃止された「人権教育総合推進事業」に変わる新たな人権教育推進制度を設置し、府立高校の本名使
用率を高めてください。
2.「進路担当説明会」時に、公務員・教員などの国籍条項が撤廃されていることや民族系奨学金制度などについ
て説明するよう継続指導してください。
3.「在日外国人生徒の進路追跡調査」の結果を明らかにし、企業の在日外国人に対する偏見や就職差別を根絶
してください。
4.就職時に学校が企業に提出する「調査書」に本名を記入するよう指導してください。
5.外国青年招致事業(JETプログラム)による韓国語の指導助手(AKT)を、継続して招聘してください。
6.すべての府立高校に「韓国語」を開設するよう指導してください。
W 民族学級など
1.府費民族講師配置校を民族教育・国際理解教育のモデル校として位置づけし、その役割を果たすことができ
るような環境を整えてください。
2.在日外国人が在籍するすべての小・中学校に民族学級を設置し、単位市外教主催で児童・生徒を対象とした
地域の取り組みを実施するよう指導してください。
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